余談


算数に必要なもの

箱根の伝統工芸品である寄木細工に秘密箱というものがあります。一定の手順で面を動かさないと開けられないもので、パズル兼芸術品として土産物屋などで売られています。

算数の問題を解くことは、秘密箱を開けて中身を取り出すことに似ています。算数力を上げるために何が必要か、秘密箱の例で考えてみました。

 

1.計算力

 算数といえばまずは計算。計算力は筋力です。寄木細工の秘密箱を開けるためには力は不要ですが、算数の秘密箱は力が必要なことがしばしばあります。他の人が苦労して押したり引いたりしているところも、筋力さえあれば簡単にクリア。もっと超人的な筋力を身につければ、本来の手順をすっ飛ばして箱を叩き割ることもできます。まさに、力こそパワー!

 

2.解法や公式などの知識

 解法や公式などは、箱を開けるための便利な道具です。条件さえ合えば、あっという間に箱を開けてくれます。典型問題を解くときには心強い味方となってくれるでしょう。ただし、条件が合わないと使えなかったり、たくさん覚えすぎるとどれを使うかわからなくなったり、意外と不便な一面もあります。道具をそろえることだけが算数の勉強ではありませんし、道具をそろえることだけが算数の勉強でもありません。(大事二回)

 

3.数学的概念

 指導方針のページでも述べましたが、算数や数学に関する事柄に対するイメージのようなものです。たとえば「平均=地ならし」のようなイメージ。このイメージがあることで「この問題文は結局平均のことを言っているのだな」と問題の姿をとらえることができます。つまり概念とは箱の内部を見通す透視能力です。正しい概念をたくさん持っていれば解像度が高まります。次の論理的思考力とともに、初見問題では必須の能力といっていいでしょう。普段から式だけでなく図や表などを使って問題を解くことでも、概念は少しずつ身についていきます。

 

4.論理的思考力

 論理的思考とは筋道を立てて考えること、たとえば「BがAより大きくCより小さいなら、CはAより大きい」などのような考え方です。論理的思考によって「ここを動かしたら次はここを動かして・・・」と、計画を立てることができます。だから、論理的思考力は計画立案能力です。数学的概念によって透視された箱の内部を観察し、論理的思考力によって計画を立てる。計画を実行に移すには筋力も必要で、必要があれば道具も使う。このようにして、初見問題は解かれていきます。論理的思考ができているかどうかは、解答の流れを言葉で説明してもらうとわかります。

 

 これまでいろんな塾に通っている生徒を見てきましたが、それぞれの塾によって方針はかなり違っていて、3と4に力を入れているのがわかる塾もあれば、1と2ばかり詰め込んでいるのではないかと思ってしまう塾もあります。県内では小5から受験勉強が本格化するので、2年間では3と4まで手が回らないよという事情もわかるのですが、1と2ばかりが算数の勉強だと思ってしまうと、特に理系志望の生徒にとっては取り返しのつかないことになります。1と2だけでなく3と4も大切にしてもらえるよう、切に願っております。